東日本電信電話株式会社

Mackerelとクラウドで組織の壁に挑む社内スタートアップ 東日本電信電話株式会社——Mackerelをサービスに組み込む

Mackerel導入事例 東日本電信電話株式会社

東日本電信電話株式会社 https://www.ntt-east.co.jp/

メンバー1200
  • 東日本電信電話株式会社

    ビジネス開発本部第一部門クラウドサービス担当担当課長

    白鳥 翔太氏

  • 東日本電信電話株式会社

    ネットワーク事業推進本部設備企画部ビジネス推進部門

    小暮 哲平氏

構成:星 暁雄

所属・写真はインタビュー当時(2022年4月)のものです

NTT東日本は「クラウド導入・運用サービス」を2019年から提供しています。このサービスは、AWS(Amazon Web Services)、Microsoft Azureの導入から、24時間365日の運用サポートまでを含むMSP(マネージド・サービス・プロバイダ)と呼ばれる形態のサービスです。サービス内には監視基盤として、Mackerelが組み込まれています。

このサービスの立ち上げに関わった白鳥翔太さん(ビジネス開発本部第一部門クラウドサービス担当 担当課長)は次のように話します。「われわれのお客様の中心は地域の中小企業です。多くの場合、情報システム担当者が1人だけだったり、総務の人がサーバーも見ている状態だったりします。クラウドの運用でも専門的なことは分からない場合があります。そこでグラフィカルな表現で見やすいツールを求めており、Mackerelを採用しました」。

グラフィカルなダッシュボード作成機能が決め手に

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白鳥 翔太氏

 中小企業では「ソロ情シス」や「兼任情シス」の会社がよくあります。情報システムの専任者が1名だけだったり兼任だったりする職場で求められるのは「わかりやすさ」「使いやすさ」です。

白鳥さんらは、中小企業のお客様でも分かりやすく使いやすいグラフィカルなUI(ユーザー・インタフェース)を提供できるネットワーク監視ツールを探しました。結果として社内でSaaSツールを評価していた部署からMackerelを紹介してもらったと言います。

Mackerelを採用したもう一つの理由は、すでに中小から大企業まで幅広い導入実績があるクラウドベースのサービスであることです。「事業の立ち上げの際、少人数のチームで、しかも4カ月程度と短期間でサービスを作るよう求められました。スピーディに事業を立ち上げるため、自分たちで開発するのではなく、既存の良いツール、サービスを探す必要がありました。その中で、Mackerelを選定しました」(白鳥さん)。

小さなチームで短期間にサービスを立ち上げるため、白鳥さんらは社内で賛同者を探しました。そこで出会ったのが、クラウドに関わる運用の技術面を担当する小暮哲平さん(ネットワーク事業推進本部 設備企画部 ビジネス推進部門)です。

小暮さんは次のように話します。「私たちのチームでは、白鳥さんらから声を掛けられる以前より、社内向けシステムにおいてAWS等のクラウドを活用しており、システム運用を内製にて行っていたため、運用ノウハウを蓄積しており、社内ノウハウをお客様に展開する形でサービスの事業化を進めました」

社内のノウハウ、人材をうまく活用することで、エンタープライズ企業の中の小さなチームがクラウドを提供し運用する事業を素早く立ち上げることに成功した形です。チームは社内スタートアップとしてのチャレンジ精神を共有していました。

「お客様と一緒に改善していく」、そのためのMackerel

お客様の「困りごと」を解決するうえで、Mackerelはどのように使われているのでしょうか。

白鳥さんはこう言います。「結局のところ、お客様にクラウドを使い続けてもらうには、一緒に改善していく取り組みが必要です。そのとき、ダッシュボードなど同じ画面、共通の指標をお客様と当方で共有しながらやっていきたいと思っています。私たちも一緒になって利用状況のレポートを作り、例えば『このままだと3カ月後にディスクがいっぱいになります』とご案内を出したりもします。そういったプロアクティブ(積極的、先見的)な活動をしていく上で、わかりやすいツールが欲しかった。それがMackerelです」。

事業化は早いテンポで進んでいきます。Mackerelを選定してから再販の契約を結ぶまで3カ月程度。サービス発表後1カ月でファーストユーザーを獲得。それから3年近くが経過した取材時点(2022年4月)では約200社のお客様、約850サービスの規模に成長しています。

チームは社内スタートアップとしてのチャレンジ精神を共有していました。

コンポーネントを組み合わせていくクラウドサービスを商材としてスタートアップ的なやり方で進めたことが、一つのポイントでした。「準備期間は、サービス仕様のほかに主に社内のセキュリティ基準をクリアするために使いました。これは今まで通りの品質でやらないといけません。一方で、クラウドを使うには、それまでのやり方を変えないといけない部分もありました」と白鳥さんは言います。

このサービス事業はNTT東日本にとっても挑戦でした。従来型の事業との大きな違いは、MSPの形態のクラウドサービスは購入から導入までが素早いことです。従来提供していた受託開発のスキームでは、品質基準を守るために会議体を配備するなど準備に時間がかかっていました。

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事業を成長させるため、社内組織の役割分担をよく考えた

サービス開始後も、サービス内容の改善が続いています。サービス開始時点ではNTT東日本が自ら販売したAWSやAzureのアカウントだけをサポートしていましたが、半年後には「すべてのアカウント」にサービス対象を広げました。また、オンプレミスの情報システムからのデータ移行やOS設定や、お客様持ち込みアプリケーションの導入もサービスの範囲に含めました。

「中小企業のお客様は、ワンストップで全てお願いしたいと思っています。そこを解決しました」(白鳥さん)。

クラウドを使うには、それまでのやり方を変えないといけない部分もありました。

そして2020年には、NTT東日本と、クラウドに強いシステム構築企業クラスメソッドの合弁で、クラウド専業のネクストモード株式会社が設立されます。このネクストモードが開発したクラウド上のシステムの運用も、協業して取り組むことになりました。

「これまでの我々のお客様は、中小企業が主でした。一方、ネクストモードのお客様は大規模なシステムが多く、要求が複雑化してサービスに2面性が出てきました」と白鳥さんは言います。

このようにサービスを成長させるには、組織上の工夫が必要でした。小暮さんは「運用で定型化されたノウハウが溜まってきた段階で、社内の別部署など、よりスケールできる組織に任せるやり方をしました。私たちはスタートアップ的な組織で、新しいニーズやプロフェッショナル向けの知見を蓄積していき、定型化できたノウハウは別の組織に展開していくスタイルです」と説明します。

APIで自動化を進め、継続的に改善を繰り返す

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小暮 哲平氏

MackerelにはAPIがあり、プログラムを組むことで多くの作業を自動化できます。小暮さんは「Mackerelは、APIが豊富で、また外部の機能と連携するインテグレーション機能が充実しています。この2つの機能を使って自動化を進められることが大きなメリット。我々の仕事の中心となっているのは、運用そのものというより、むしろMackerelを利用して業務を自動化するプログラムを作り、改善していく仕事です」と話します。Mackerelのためのコードを書くことが日常の仕事なのです。

Mackerelのための自動化プログラムを継続的に改善していることからも分かるように、NTT東日本が提供する「クラウド導入・運用サービス」も継続的に改善されています。白鳥さんは「サービスのローンチから、1カ月半に1回の頻度でアップデートをかけています」と話します。

クラウドと、クラウド以前とでは、何が変わったのでしょうか。

白鳥さんはこう話します。「課題を解決するとき、今やクラウドを使うか使わないかではなく、クラウドを使ってどう解決するかが大切になってきています。クラウドを導入してアプリケーションを開発して終わりにするのではなく、継続的に改善できる仕組みを、組織の体制の変更も含めて作っていく必要があり、そのためにツールやアプリケーションを選んでいく必要があります」。

継続的な改善が軸となり、そのための組織を作り、そのためのツールを選ぶ形になったという訳です。クラウド以前とは考え方が変わってきているのです。

クラウドを導入して、アプリケーションを開発して終わりにするのではない。

Mackerelとクラウドで組織が変わった

白鳥さんに、クラウド事業の手応えを聞いて見ました。「あるタイミングで、営業組織から『これをやったらどうでしょう』と積極的な提案が出てくるようになりました。非常にやりやすくなった。課題に対して自分たちで考えていく組織が時間をかけて出来上がっていきました」。

「お客様にヒアリングだけをしていても、そこから本当の課題は出てきません。一緒に走りながら見つけていきます」と白鳥さんは言います。走りながら、継続的に改善しながら、真の課題を発見し、解決に導いていく。このサイクルをチームが共有することで、徐々に組織が変わってきたといいます。

小暮さんは「最初のうちは摩擦もありました。それでも『クラウドではこういう文化が大事なんです』という話もしながら、組織にクラウドの文化を馴染ませていきました」と話します。

白鳥さんは、「ネットワーク構築の場合はミスをすると影響範囲が大きく、また人命にかかわる重大事故につながる可能性もあるため、ミスは決して許されない文化だったのが、クラウドの場合はむしろミスをしたら『ごめんなさい』といってすぐ直し、よりよい方法を探していく文化です」と話します。こうした文化の違いを乗り越えることが、チームにとって大きな挑戦だったのです。

白鳥さんと小暮さんに、Mackerelの評価を聞きました。小暮さんの要望の一つは「AWS インテグレーションのための操作をGUIではなくAPIでやりたい」ということでした。これは手作業をするのではなく、業務をプログラムで自動化したかったからです。この要望は半年後にMackerelに実装されました。

Mackerelの設計思想には、開発と運用、ベンダーとお客様、こうした組織の壁を越えてクラウドの情報を共有できるツールになりたいという「思い」が込められています。NTT東日本の白鳥さん、小暮さんらのチームでは、まさにこのような組織の壁を越えて一緒に挑戦するためのツールとしてMackerelが機能していました。

走りながら、継続的に改善しながら、真の課題を発見し、解決に導いていく。

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大企業の中でスタートアップのように振る舞う

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株式会社はてな
Mackerelチーム プロデューサー
加古 直己

 

白鳥さん、小暮さん、インタビューさせて頂いて有難う御座いました。私の中ではNTT東日本様という会社は大きな企業であるとともに従来の品質や伝統をしっかり守る会社というイメージを強く持っていました。

そういった意味では時代が大きく変化してきたことを実感するインタビューでした。本事例のポイントはクラウドをやっていくという変化のきっかけから始まり、スタートアップのようなスピード感で事業をスタートさせて、ビジネスにおいてもしっかりと実績を上げられたという白鳥さん達の成果にあります。

しかし、その背景には小暮さんや他の部門、ネクストモード様とのコラボレーションがありました。Mackerelがパートナー様のコラボレーションを起こすきっかけになっていたらこんなに嬉しいことはありません。我々はパートナー様との協業モデルを考える時に新規事業をゼロから一緒に立ち上げるつもりで取り組んでいます。一緒にクラウド時代のMSPサービスを立ち上げたい企業がいたら一緒に挑戦させて頂きたいと思います。

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